長野で映像をつくるということ。
MEAL RECORDS 小泉勝幸さんに聞いた、“感情設計”という映像の力

AIの進化によって、映像も文章も、以前よりずっと手軽につくれる時代になりました。
ではその中で、人が映像をつくる意味はどこに残るのか。
今回、長野市を拠点に映像制作を続ける MEAL RECORDS 代表・小泉勝幸さんにお話を伺いました。
小泉さんの生い立ちから、映像を始めたきっかけ、ブライダル撮影を経て、いまブランディングムービーへと軸足を移している理由まで。話を聞く中で見えてきたのは、映像とは単なる記録や演出ではなく、企業や人の輪郭を掘り起こすための手段だということでした。

音楽カルチャーの延長線上にあった映像
小泉さんは、もともと自動車整備士として働いた後、東京でレコード店勤務を経験し、23歳で長野に戻って独立しました。屋号の MEAL RECORDS にも、その音楽的なルーツが表れています。
映像を始めたきっかけは、自分で企画していた音楽イベントでした。
イベントを撮影し、編集し、次回の告知に使う。そんな実践から映像制作が始まったそうです。さらに中学生の頃には、スケートボード映像をVHSで編集していたという話もあり、映像表現はかなり早い段階から生活の中にあったことがうかがえました。

ブライダルから広告へ。
映像を“課題解決の手段”として捉え直す
仕事として本格化したのは、ウェディングのスライドショー制作から。
当時、一眼動画の表現が広がり始めた時代背景もあり、小泉さんは長野でも早い段階から映像の現場に入り込んでいきました。海外の映像表現にも刺激を受け、ルックを追いかける時期もあったといいます。
ただ、ブライダル市場の低迷を経て、現在は広告やブランディングムービーへと重心を移しています。
そこで強く意識するようになったのが、映像は作品である前に、課題解決の手段であるということでした。
クライアントは「映像をつくりたい」と言う。
けれど、なぜ必要なのか、誰に何を届けたいのかが曖昧なことも少なくない。だからこそ、企業の強みや弱み、競合との違い、抱えている課題を丁寧に掘り下げたうえで、企画を組み立てる必要がある。小泉さんの話からは、いまの映像制作に必要なのは見た目の美しさ以上に、設計の深さなのだと感じました。

採用動画で大切なのは、
“よく見せること”ではなく“ちゃんと伝わること”
この考え方は、採用動画にもよく表れています。
小泉さんが意識しているのは、会社を必要以上によく見せることではなく、その会社の空気や人間関係がきちんと伝わること。綺麗な言葉を並べるだけではなく、話し手が本当に納得して話しているかどうかまで見ているといいます。
求職者が見ているのは、表面的な演出ではなく、「ここで働けそうか」という感覚です。
ローカル企業にとって、この“体温”をどう伝えるかは、とても重要なテーマだと思います。

映像制作は、企業を言語化するプロセスでもある
今回特に印象に残ったのは、小泉さんが映像制作を、単なる納品物づくりではなく、企業を言語化する機会として捉えていたことです。
「なぜ映像をつくるのか」
「誰に届けたいのか」
「自社の強みと弱みは何か」
こうした問いに向き合うことで、経営者や組織自身が、自分たちの輪郭を見直していく。小泉さんは、映像とは「形のない思想を輪郭にするもの」だと話していました。非常に本質的な言葉だと思います。

AI時代にこそ問われる、
“感情設計”という視点
AIの登場で変わったのは、クライアントよりも、つくり手の側だと小泉さんは言います。
AIを使うことで、企画をより深く、より速く考えられるようになり、複数案を比較しながら精度を高められるようになったそうです。AIは代替ではなく、企画設計を補強する道具として機能している。そんな実感が印象的でした。
そして、いま小泉さんが特に力を入れているのが、ブランディングムービーにおける感情設計です。
いわゆる“シネマティック”を見た目の話ではなく、視聴者の感情をどう動かすかという設計の問題として捉えている。どこで引き込み、どこで緊張させ、どこで納得や感動に向かわせるのか。情報だけでは残らない時代だからこそ、この視点はますます重要になっていくのだと思います。
ローカルでつくる人の、これから
今回のインタビューを通して見えてきたのは、小泉さんが「映像を撮る人」から、「企業の本質を引き出す人」へと重心を移してきたことでした。
ルックから本質へ。記録からブランドへ。撮影技術から企画設計へ。その変化は、小泉さん個人のキャリアであると同時に、いまローカルで制作を続ける人間が向き合っている変化そのものでもあるように感じます。
AIで何でもそれっぽくつくれる時代だからこそ、
何を掘り下げるのか。
何を言語化するのか。
どんな感情を動かすのか。
そこに、人が関わる意味が残っていく。
MEAL RECORDS 小泉勝幸さんの歩みは、そのことを静かに示しているように思いました。
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小泉勝幸(Koizumi Katsuyuki) MEAL RECORDS代表。長野市出身。2006年開業。ブライダル映像で15年の実績を積み、現在は広告・ブランディングムービーを中心に、レンタルスタジオの運営など、映像を通じた多角的なクリエイティブ活動を展開。 公式サイト:https://mealrecords.jp








