第一章|まず、自分の仕事に問いを立てる。/ 01デザインの前に、まず「問い」を立てる。
なぜ、私たちはデザインから始めないのか。
失敗の話から振り返ってってみます。
十数年前、私は友人のエンジニアと会社を立ち上げました。まだ「AI」という言葉が出はじめた頃で、その可能性に夢を描いて、あるサービスを企画しました。けれど、知識も、経験も、資金も、何もかもが足りなかった。サービスを立ち上げることすらできないまま、一緒に始めた仲間は去っていきました。(今でも仲はいい)

当時の私は、他責思考でした。うまくいかないのは環境のせい、状況のせいだと思っていた。自分がチームをまとめられていなかったことに、長いあいだ気づけませんでした。

失敗が残した、ひとつの問い
その失敗を、私は何年も引きずりました。そして時間をかけて、ようやく分かったことがあります。あの頃の私は、答えを”決めつけて”いたのです。自分は分かっているつもりで、問い直すことをしていなかった。
今食う仕事を優先し、福利厚生を充実させればチームのモチベーションが上がると思っていました。
しかし、大切だったのは「この会社の未来が楽しそう」かということに当時全く気づいていませんでした。
うまくいかなかった本当の理由は、能力や資金以前に、「問う」という姿勢が自分になかったことだった。——皮肉なことに、あの失敗こそが、私に「問い」というものの大切さを教えてくれました。
あれから10年あまり。世界は、AI無しでは成り立たないほどに変わりました。私はAIに触れ、山小屋に籠って本を読みながら、もう一度、自分の仕事を根っこから問い直しました。この、答えの手前で立ち止まって問いを立てる作業を、私は「問いの設計」と呼んでいます。

デザインは、答えを見せる技術
私はグラフィックデザインを仕事にしてきました。だからこそ、はっきり言えます。デザインとは、答えを見える形にする技術です。伝えたいことが定まっていれば、ロゴも、写真も、言葉も、迷いなく選べる。
けれど、その「伝えたいこと」自体がまだ曖昧なまま、見せ方だけを先に整えようとすると、表面はきれいでも、誰の心にも残らないものになります。それは化粧であって、その会社自身にはなりません。かつての私が答えを決めつけていたように、問いを飛ばしてデザインから入ると、同じことが起きるのです。
だから私たちは、デザインの前に、まず問いを立てます。「この会社が大事にしてきたものは何か」「なぜ、それをやっているのか」。良い問いは、本人たちがまだ言葉にできていないもの、当たり前すぎて価値だと気づいていないものの方へ、目を向けます。

可視化は、そこから始まる
問いが立って、答えが見えてくると、その後のデザインは驚くほど強くなります。伝えるべきことが定まっているから、根拠を持って選べる。私がデザインを捨てるわけではないのは、そのためです。捨てたのではなく、順番を変えただけなのです。
「可能性の可視化」。まだ見えていないものを、見える場所へ連れ出す。その最初の一歩は、いつも問いです。
——では、その問いの先にある「ブランディング」を、私はどう考えているのか。世間で言われているものと、私の考えは、少し違います。次回は、その話を書きます。
