2026.09.04

第一章|まず、自分の仕事に問いを立てる。/ 02 私が考える、ブランディングとは何か

「ブランド」という言葉の語源をご存じでしょうか。

もとは、牧場で自分の牛と他人の牛を見分けるために押した、焼き印だと言われています。英語の brand は、その焼き印を指す古い言葉から来ていて、つまりブランドの出発点は、「他と識別すること」でした。

だからでしょうか。多くのデザイナーは、ブランディングを「識別できることや統一感をつくること」だと考えています。ロゴを整え、色を決め、書体を揃え、どこを切り取っても同じ表情に見えるようにする。
これは正しい仕事です。私自身、デザイナー時代は整えることに心血注いでいました。

でも、キャリアを重ね、企業の課題を解決をしたいと思うようになりデザインの役割やクリエイターとしての視点を変えるようになりました。

今回は実例を挙げながらお話しします。

志賀高原のホテル シャレー志賀様のブランディングから紐解きます。

 

識別の、その前にあるもの

識別は、実はいちばん最後の工程です。ロゴや色や書体で「他と見分けがつく」ようにできるのは、伝えるべき中身が、すでに定まっているからにほかなりません。

ところが実際には、その手前が抜け落ちていることが少なくない。「そもそも、何を識別させるのか」。その会社が何を大事にし、何を信頼の拠りどころにしてきたのか。そこが見つからないまま統一感だけを整えても、出来上がるのは、なんだか整ったデザインです。

「意味」ではなく、「気づき」

ここまで、私は「意味」という言葉を使いたくなります。でも、正直に言うと、それも少し違うと思っています。意味とは、外から名づけて固定するものだからです。「これは、こういう意味です」と誰かが答えを与えた途端、そこから先の広がりが止まってしまう。

私がやろうとしていることは、そこに”意味を与える”ことではありません。対話の中で、その会社自身が、まだ言葉にできていなかったことに、
“ご自身で気づく”そのお手伝いをさせていただいているだけです。

気づきは、内側から立ち上がるものであるべきで、対話を通じて、徐々にアウトラインが見えてきます。

対話を通じて、シャレー志賀様での私の答えは「オーナーご夫婦」でした。
以前WEBではお部屋の魅力や周辺の魅力など、商品説明をきれいに作り込まれサイトでした。
対話を重ねながら気付いたオーナーご夫婦のホテルに対しての思いや自然への敬意が深く、お二人を全面だすことで、
解像度が上がり信頼獲得につながりました。
とくに効果が上がったのが「採用」でした。オーナーの人となり、ホテル歴史、志賀高原の自然が物語を通じて共感していただきました。

 

——とはいえ、こう書くと、こんな声も聞こえてきそうです。「デザインで食えなくなったから、そんなことを言っているのでは?」。次回は、その問いに、正直に答えます。